ダークウェブ闇市場とビットコインの相性が良い理由
セキュリティの面白さと重要性をわかりやすく伝えたい……そんな想いを持った二人が邂逅(かいこう)。ほとばしる両者のセキュリティ情熱が激突した結果、過去にないセキュリティ・コンビが誕生。その名は「ピンク・ハッカー」。ピンク・ハッカー毎週月曜日更新予定です。
今回は仮想通貨「ビットコイン」を取り上げました。なぜダークウェブの闇市場ではビットコインが使われているのでしょうか? その秘密を解説します。
ビットコインをあげます
ミスターピンク。なにやらご機嫌だね。いったいどうしたんだい?
いや〜 道を歩いていたらさ、ビットコインが落ちていたんだよ。
え、ビットコインが落ちていたの? 見せて見せて。
これだよ。
ええ、これがビットコインなんだ。初めて見たよ!!!
金色が1ビットコイン、銀色が0.5ビットコイン、銅色が0.1ビットコインなんだよ。
な、な、なるほど!
いつも、フレッシュ・プリンスにはお世話になってるから、1ビットコインあげるよ。
え、え、本当! 日本円でいくらぐらいなの?
今日(11月28日)のレートだと、8万4169円かな。
は、8万円! 私の昼めし代160回分だよ! 今までピンクのことを単なる桃色キザ野郎と思っていたけど、これから「ピンクさん」と敬称をつけます。とりあえず、お礼の接吻を……! ちゅ、ちゅ
いや、本当にやめて。気持ち悪い。正直に言うけど、それはオモチャのビットコインで、本物じゃないよ。ヤフオクで購入したんだ。
えええええ!!
そもそも、ビットコインがリアルな硬貨として流通しているわけないじゃないか。バカだな〜
ギギギギ!
そんなわけで、今回は初心者のためのビットコイン講座です。
ビットコイン……という名前は知っていても、具体的にどんなものか、知らない人も多いでしょう。私のように、コインを出されたら信じる人もいるかもしれない。
ビットコインはとっても奥が深いテーマです。興味がある人は講談社ブルーバックスの『暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり』、もしくは仮想通貨取引所の「Zaif Exchange」を運営している朝山貴生氏が執筆し、TechCrunch Japanに掲載された『誰も教えてくれないけれど、これを読めば分かるビットコインの仕組みと可能性』を読みましょう。
これを読めばなぜビットコインが「通貨革命だ!」と言われる理由がわかります。そして国家とは何か、通貨とは何か……
と、ビットコインを語ると、壮大なテーマになりがちです。が、私たちは「なぜダークウェブの闇市場でよく使われるの?」という点を中心に語っていきたいと思います。
ビットコインはダークウェブで人気
なぜビットコインはダークウェブと相性がいいんでしょうか?
良い質問だね! 理由は4つある。
(1)送金する際に双方の身元が隠せる
(2)送金時の手数料が安い
(3)安心して資産の保有、移動ができる
(4)誰でも平等に利用ができる
そんなに理由があるんだ。
それぞれ、簡単に解説してみよう。最初の「送金する際に双方の身元が隠せる」は、ダークウェブを愛用しているユーザーにとってはとってもありがたい。
なんで?
例えばダークウェブの闇市場で、出品者が麻薬代金を「束京二菱USJ銀行广尸支店 普通 2323 星桃二郎」に振り込んでくださいと書き込んだら、どうなると思う。
(广尸支店ってなんて読むんだろう?) 警察がこの書き込みを発見して、銀行に問い合わせをすれば、出品者の個人情報がわかり、すぐに逮捕されちゃうね。銀行口座が他人名義や架空情報であっても、捜査のヒントにはなる。
その通り。犯罪を行なう際に大変なのが、お金のやり取りなんだ。ネット上での金銭授受はどんなに注意を払っても、必ず足跡が残ってしまう。
だから、ダークウェブで活動している日本の麻薬の売人たちは、直接会って現金と商品の交換をしている。リアルで会って現金を受け取る方が証拠が残らないし安全だ……というのは何だか不思議。ビットコインについて考えていくと、現金の匿名性がよくわかる。
なるほど。ビットコインは「ビットコイン・アドレス」と呼ばれる26文字から35文字のランダムな文字列宛てに送金するだけだね。
銀行と違って送金先の情報から、それを使っているどんな人なのかわからない。もちろん送信元の情報もわからない。
そうなんだ。だけど、ビットコイン・アドレスと携帯電話番号やメールアドレスを一緒に公開すると、電話番号とアドレスが紐付けされてしまい、そこから個人情報が判明してしまう危険性が出てくる。
その2の「送金時の手数料安い」ってあるけれど、銀行と比べてそんなに違うの?
富士山(標高3776m)と天保山(標高4.53m)ぐらい違うよ。銀行の海外送金手数料はとっても高いんだ。金融機関によって違うけど、だいたい1回につき1000円から5000円の費用がかかり、これに加えて外国為替手数料が必要となってくる。そして、即日入金とはならない。
5000円送金する際に5000円の手数料を請求される可能性があるのか。
その点、ビットコインだと数十円の手数料で送金することができる。しかも、ほぼ即日に入金される。
それは便利だな〜 (3)の「安心して資産の保有、移動ができる」ってのはよくわからないな。
これは(4)の「誰でも平等に利用ができる」とセットで考えると分かりやすい。アンダーグラウンドの住人、マフィア、ヤクザ、サイバー犯罪集団……といった人たちは、まず正規に銀行口座を作ることが難しい。
え、なんで?
犯罪組織が使っている銀行口座と判明されたら、国に凍結・没収される可能性があるからね。日本でも反社会勢力の人たちは銀行口座を開くことができない。だから、犯罪者の方々は不正に入手した口座を手に入れて、ビジネスを行うんだけど、この口座も怪しいものが多く、詐欺師や他の犯罪者にお金を盗まれたり、そもそも口座自体が凍結される可能性もある。
なるほど。だから誰でも利用ができて、安心して資金の保管・送金ができるビットコインに需要がでてくるんだ。
実際にビットコインを使ってみよう
さてさて実際にビットコインを買ったり、使ったり、送金してみよう。
ビットコインを買うにはどうしたらいいの? 銀行で売ってるの?
ビットコインを手に入れるには、いろいろな方法があるけど、ビットコイン取引所に口座を作るのが一般的だ。
Googleで「ビットコイン取引所」で検索したらたくさん出てきた。
どのサイトも無料で口座が作れるので、いろいろ見たり、評判を調べたりして、作るといいよ。
何か注意することある?
基本的にビットコインでの送金のやりとりは、匿名でできる。だけど、ビットコインの取引所で口座を作る際は、どこも身分証明書のデータ提出を求められることがほとんどだ。個人的には「怪しい取引所」には身分証明書を出したくない。
確かに出したくない。だけどなんで、証明書を出さないとダメなの?
マネーローンダリング対策だったり、トラブルが起きたときのためだと思う。日本だけでなく海外の取引所でも、たいていは身分証明書のデータは必須だ。
ビットコインの口座を作る際、身分証明書提出は必須(以下、画面はcoincheck.comから)
ビットコインのやりとりは匿名でできても、口座を作る際に個人情報を登録しないといけないのか……
大丈夫。日本でも1日に数万円以下の取引なら、身分証明書を提出しなくて口座を作ることができるサイトもある。
なるほど。では、取りあえずそこで口座作ってみよう。え、メールアドレスとパスワードを入力しただけで……開設できた!
ビットコインの売買、コインを送る・受け取る、日本円やドルに変換したい時は「ウォレット」機能を使おう。
コインを受け取るのボタンを押すと「19z31wn34wBMMwyhv2HEHSS51B5f5utMcHhm」
(※この文字列はフェイクです)
という文字列がでてきた。
その文字列を、コインを送りたい相手に伝えればいい。この情報だけだと、銀行口座と違って、相手がどんな人間かなんて一切わからないよね。
ほんとうだ。コインを送る画面を見てみよう。宛先、金額、手数料、送金可能金額が、表示されている。ここのサービスだと手数料は、0.0002BTC(約17円)かかるんだ。
宛先にアドレスを入力して、ボタンを押せば送金完了だ。この口座はすでにビットコインを購入しているからすぐに送ることができるよ。
送金先のアドレスを入力し、送りたいビットコインの数値を入力する
試しにやってみよう……わ、もう送ることができた。
リアルタイムではないけど、すぐに相手に届くよ。
これは便利だな〜
普通に便利なビットコイン
ビットコインは本当に匿名でやりとりができるんだね。
ビットコインの受け取り用のアドレス
うん。私も初めて使ったときは「会社の裏金作りが簡単にできるな」と思いました。
こら! そういうことを言うから、ビットコインとピンク・ハッカーのイメージが悪くなるんだよ。
さっきも述べたけど、取引所にアカウントを開設する時に、身分証明書などの提出が求められるから、完璧な犯罪を目指すならいろいろと工夫をしなくてはいけない。身分証明書が一切不必要な取引所でも、ビットコインを買う際に銀行口座の登録が必要だったり、誰が運営しているか不明だから詐欺の可能性があったりと……
そういう話はまた今度やりましょう。
そうだね。それではまた次回!