撮影情報がわかる「Exif」は便利だけど危険
セキュリティの面白さと重要性をわかりやすく伝えたい……そんな想いを持った二人が邂逅(かいこう)。ほとばしる両者のセキュリティ情熱が激突した結果、過去にないセキュリティ・コンビが誕生。その名は「ピンク・ハッカー」。
ピンク・ハッカー毎週月曜日更新予定です。
今回は撮影した情報を写真に記録する「Exif」についてのお話。写真の整理や思い出に役立つExif。しかしネットにアップロードする際は注意が必要なようです。
もうすぐ2016年も終わりだな。年末年始はどう過そうかな? 海外に行くのも良いし、国内旅行も捨てがたいな~ ねえ、フレッシュ・プリンスはどうするの?
あれ、いない!
社内のカレンダーを見ると、今日は休みになっているな。お、噂をすればフレッシュからLINEのメッセージがきたぞ。
フレッシュプリンスから送られてきたLINEメッセージ
ヒーコラじゃなくてヘーコラかよ! そして社畜ってなんだよ! 高給をもらって働かない人間に比べたら256倍マシだぞ! しかし、この写真に映っている左にある銅像……どこかで見たことあるな。
添付された問題の写真
これ…… いつも我々が撮影している場所じゃないか!
見覚えのある像が映っている!
お、また写真が送ってきたぞ。 なになに…
「ニューヨークで『ニューヨーク・チーズケーキ』を食べています。本場で食べるとやっぱり味が違いますね。ハドソン川が見えますが、奇跡を感じます。ピンクはスーパーの安いケーキでも食べて、安い味覚を満足させてください(笑)」
プリンスから送られてきた写真
あいつは何を言ってるんだ!? 昨日まで錦糸町のロシアンパブで飲んでいた人間が、この時間にニューヨークにいるのは不可能だし、どうみても近所の公園だし。
あ、この2つの画像にはExifのGPSデータがあるので、見てみよう…… お! ちゃんとニューヨークのセントラルパークになっている!
画像のExifを見てみるとGPSデータを発見。いったいどこで撮影したか表示させてみると……
GPS情報はマンハッタンのセントラルパークにいる! フレッシュは本当にニューヨークにいるのか?
GPSデータをニューヨークに偽造して、写真データを送ったからピンクのヤツびっくりしているだろうな。けけけけ。
フレッシュ! 気持ち悪い笑い声が公園中に広がっているよ!
ひえー なぜバレたの!?
仕事中に変な写真を送ってくるな!
ExifのGPSデータまで偽造したのに、なぜわかった!?
いや、だって、映っている写真がどう見ても近所の公園だったから、いくらExifデータを書き換えても、すぐにわかるよ。
くそー しまった! これが「策士、金に溺れる」ってやつか! あれ、「策士、女に溺れる」だっけ、それとも「薬に溺れる」だっけ?
「策士、策に溺れる」だよ! そして策って程じゃないよ。単なるお間抜けボーイだよ。
もうちょっと驚いて欲しかったな。「え、なんでニューヨークにいるの?」とかさ。
だったら、撮影場所を考えなよ。お台場の自由の女神とかさ。
さすがにピンクにイタズラするために、ひとりでお台場には行けないよ。
イタズラもやるとき真剣にやらないと!
というわけで、今回はExifとその危険性について解説します。
解説します!
そもそもExifとは何ぞや?
そもそも、Exifってなんですか? 出口のこと?
それはEXITだよ! 今回紹介するのはExifだよ。
Exifは、なんて読むの!?
さっきから「エグジフ」って言葉に出しているでしょ。
ああ、文字で読んでいたから気がつかなかったよ。「イグジフ」とも言うよね。
……。Exifは「Exchangeable image file format」(エクスチェンジャブル・イメージ・ファイル・フォーマット)の略で、富士フイルムが開発。写真を撮影した際の、日時、カメラの機種、露出やシャッタースピード、GPSデータなどを画像に埋め込む際の規格なんだ。
Exif情報はどうやってチェックしたらいいの?
Windowsの場合は写真を選んで右クリックで「プロパティ」を開き「詳細」を選ぶ。Macは写真を「プレビュー」で開いて、「ツール」→「インスペクタ」を開くとExifがわかるよ。
WindowsでExifデータを見ると、このように表示される
ソフトを新しく入れなくてもわかるのは良いね。それにしても、撮影日時やGPSデータを写真に埋め込んでおけば、いつ・どこで撮影したかすぐわかるから便利だよね。
私は女子力が高いオッサンなので、食事をする時にiPhoneで料理を撮影しているけど、「この料理はこの場所で食べた」と見直すときに便利。
その便利さが逆に危険な場合があるんだよ。
ゲーテもこう言っている「光の多いところには、強い影がある」。
フレッシュもこう言っている「Exifあるところには、危険がある」ってね。
で、具体的にはどんな危険性があるの?
え、何も知らないでそんな格言を言ったの!?
例えば自宅でGPSデータが入ったままの写真を撮影し、ネットにアップロードするとExifからすぐに住所がバレてしまう。Exifのデータには撮影日はもちろん、細かい時間までハッキリとわかるので、複数のExifデータを手に入れると、その人の行動をトレースすることができる。
ひえー 怖いね。私が忘年会の帰りに、電車に乗る前にラーメン食べて、自宅で白米を食べて、出かけて近所のラーメン屋でチャーシュー麺を食べていることが、バレてしまう危険性があるんだね。
そう。だから、フレッシュが「客先に営業行ってきます。デリバリーは大変だな~」と言いながら、帰宅して、ゴロゴロしながら「五時に夢中」を見ていることも、アップロードされた写真を見るとモロバレるなのさ。
え、そんなことまで、バレていたの!?
そんな悲劇をうまないために、最近のSNSやブログサービスでは、写真をアップロードすると、自動的にExifデータを削除してくれる。
そうだよね。多くのユーザーはそんな情報を知らないから、うっかりアップしたら大変なことになっちゃう。私のサボりもバレなくて良かった。
自動で削除してくれるから危険!?
Exifデータを自動的に削除してくれるサービスは多いけど、全サービスがやっているわけじゃない。実はフレッシュが送ってくれた写真も本来ならExifは削除されるはずなんだけど、今回はしっかり残っていた。それはなぜか?
不肖プリンスが解説しましょう! LINEのアプリから写真を送信するとExifデータは完全に削除されてしまう。だけど、最初から入っているiPhoneのフォト閲覧アプリ「写真」からLINEを使って写真を送信すると、Exifデータが削除されない。
LINEのアプリから「写真を選択」や「カメラ」から撮影して送信を行なうとExifは削除される
しかし、このように「写真」アプリからLINEに画像を送信するとExifは残ったままになる
繰り返しになるけど、Webサービスの多くは自動的にExifを削除してくれる。しかし、最初から消してくれなかったり、このLINEのように仕様によってデータが残ってしまうこともあるから、意識し注意しましょう。
カメラの撮影時に位置情報を書き込まないようにしよう
位置情報を埋め込まれた写真を公開したくない人は、スマートフォンで撮影する際に、最初から位置情報を記録しないようにしておきましょう。スマフォ側で設定しておけば、撮影した写真にはGPSデータは入っていません。
iOSの場合は「設定」→「プライバシー」→「位置情報サービス」→「カメラ」を選んで「許可しない」をセレクト
Androidの場合は「設定」→「位置情報」→「カメラ」→「位置情報」を選んで「オフ」を選ぶ
そもそも自動的にExifを消してくれるから、存在自体を知らない人も多そう。
そう、その通り。まずはExifの存在を知るべき。自動的に消されるのに慣れてしまうと、うっかりExifつきの写真をあげてしまう可能性が高くなる。某有名ネットサイトや大手ニュースサイトにアップされた写真にGPS付のデータあり、執筆者の住所が丸わかりの事例もあったからね。
某サイトの記事。GPSデータを含んだままアップロードされている
Exifデータを消す方法と偽造する方法
ネットにあげる写真のExif情報は消そう! でも、どうやって消せばよいのかな?
Windowsだと消したいファイルを選択して「プロパティ」→「詳細タブ」→「プロパティや個人情報を削除」を選ぶ。すると、ダイヤログが出るので、「このファイルから次のプロパティを削除」にチェックし、「すべて選択」して「OK」をクリックしよう。
Macの場合はプレビューアプリでGPSデータは削除できるけど、他のデータはできない。完全に削除したい人は「ImageOptim」といったソフトを使うしかない。
Windowsは写真のプロパティから削除可能
なるほど。これで消すのはバッチリだね。
ちなみにExif情報をいじるのは専用アプリが出ているので、それを使いましょう。
そう! 会社のタイムカードの出勤データは改竄できないけど、Exifデータはいじることができちゃう。だから、「あ、この人の写真に埋め込まれたGPSは、この住所だから勤務先はココだ!」なーんて推測しても、実はフェイクかもしれないの注意。
偽のExif情報を信じて、それをTwitterやFacebookで呟いて、後からウソだと判明して、ネット住民につるし上げられて、恐ろしいリンチが加えられるかもしれない!?
さすがにそこまでされる可能性は少ないけど、Exifデータをそのまま信じてしまうのは危険だよね。
公開するのも危険、信じるのも危険……デンジャラスな女なんだね、Exif子ちゃんは……惚れちゃいそう。
年末年始は写真を撮ってネットにあげる機会も多いので、気をつけましょうね。それでは、また来週。